こんにちは理学療法士の塚本です。
自分自身、緩和ケアの現場でのリハビリに重きを置いております。そちらについて語らせていただければと思います。
医療現場で緩和ケアが重要な役割を果たす中、患者とその家族にとって「良き死」を迎えることが、近年注目を集めています。その中で提唱されているのが「Quality of Death(QOD)」、すなわち「死の質」という概念です。がんの治療が根治を目指す段階から緩和期へと移行する中で、このQODを高めるためにリハビリテーションが果たす役割について考えてみましょう。
緩和期におけるリハビリテーションの目的
がんの進行によって、外科的切除や化学療法での根治が難しい場合、治療の焦点は患者の生活の質(QOL)の維持や改善にシフトします。緩和ケアの中で行われるリハビリの主な目的は、次の2つです。
- 患者のQOLを最大限に保つこと
日常生活動作(ADL)の維持は、患者のQOLに直結します。体力や筋力の低下を最小限に抑え、患者ができるだけ長く自立した生活を送れるよう支援することが重要です。 - がんによる症状や合併症の軽減
疼痛管理や浮腫の改善、呼吸機能のサポートなど、身体的な症状を緩和することで、患者がより快適に日々を過ごせるようになります。
QOD向上のためのリハビリの役割
QODを高めるためには、「最期まで疼痛がない」「意思決定ができる」「できるだけ身体を動かせる」といった状態を維持することが重要です。リハビリがこれらにどのように寄与するのかを具体的に見てみましょう。
- 疼痛管理と運動療法
適切なリハビリによって筋肉の緊張を緩和し、疼痛を軽減することが可能です。また、軽いストレッチや関節の可動域訓練は、運動不足による二次的な痛みや拘縮を予防します。 - 意思決定を支えるコミュニケーション
リハビリを通じて患者が自らの身体の状態を理解し、できることと難しいことを認識する手助けをすることで、意思決定能力を支えます。患者が自分らしい選択を行える環境を作ることは、QODを高める要素の一つです。 - 移動や活動の支援
ベッドから椅子への移動や短距離の歩行といった基本的な動作を維持することで、患者自身ができる範囲での自立を促進します。これにより、家族との時間や生活の中での楽しみを増やすことができます。
医療者としての視点
医療従事者である私たちに求められるのは、患者やその家族の希望に寄り添いながら、適切な支援を提供することです。緩和ケア期のリハビリは、治療の延長ではなく、患者の「人生の最期をどう過ごすか」という視点に立ったケアです。QODを考慮したリハビリを実践することで、患者が最後まで「生きる喜び」を感じられる支援を目指したいと思います!